何度目かの京都旅行。今回は彼女の提案で着物をレンタルして京都を巡る。
着物は思いの外、僕の身体に馴染んだ。もう10年くらい前のことだが、友人と旅行に行った際にまだ20になるかならないかの浴衣姿の僕を見て小説家みたいと称したことを思い出した。それくらい着心地に違和感がない。(僕自身は小説を書いたことはないけど。)それより、そんなことより、僕より40分も後に準備を終えた彼女がとても可愛らしいのだ。チューリップや紫陽花のような花が描かれた薄い黄色の着物、お店のお姉さんに結んでもらった三つ編みもオレンジ色の髪飾りも彼女の優しい雰囲気に似合っていてとても素敵だった。
ランチやカフェ、はたまた美術館にも着物姿で入る。何度も来たはずの京都なのに春らしい新鮮な風が吹くような趣があった。(次の日の朝に大寒波によって雪が降るとは思いもよらない二人)
着物のまま入れそうな居酒屋をホテルの近くで探し、しまあじのお造りを食べる。この二日間で一番美味しかったのがしまあじのお造りだった。
その後、一度ホテルに戻って服を着替えて、祇園四条に泊まれば必ず行くウイスキーと燻製を味わうことができるお店に歩いて向かう。せっかく来たのだから酔いたいと言う彼女はジンライムを飲んでいた。

